ラングドック地方は、フランス南西部を占める広大な地方で、西はボルドーが位置するアキテーヌ地方、東はプロヴァンス地方に囲まれています。もともと、この Languedoc (ラングドック) という名前は、現代フランス語の祖先ともいうオイル語を話していたロワール川以北の地方に対して、オック語を使っていたフランスの南半分の地方すべてを意味しています。

この地方への入植が始まったのは旧石器時代まで遡り、ヨーロッパの中でも、有史以前の軌跡が豊かに残った場所の一つと言えます。

古代には、ケルト民族によって文明がもたらされ、農業・牧畜・街の建設が行われます。その後、ギリシア人がぶどうの木とワインをこの地方にもたらし、同じ頃ローマ人は現在の主要な都市の発達に大いに貢献しました。そしてついに、西ゴート族がやって来て、トゥールーズという大都市を作り上げるのです。

中世時代の前期には、サラセン人とフランク人がこの地で諍いをおこしますが、これらの戦争は西暦1000年ごろには終焉を向かえ、その後中世時代は、文化と経済の開花をみることになります。修道院の建立、街の拡大と、中世時代のラングドック地方は、高度な文明を所有していました。この時代の文化の最高峰とも言えるのが、ヨーロッパ全土で最も美しい建築物に数えられるロマネスク教会や、文学史にオック語の名前を刻ませた南仏の吟遊詩人トゥルバドゥール、詩人、音楽家たちです。

この文化的・精神的な洗練が繰り広げられたこの時代に、ラングドック地方の人々が現在でも悲劇として捉えている出来事が起こります。アルビジョア派に対する十字軍の派遣です。